メーカーの現場は最も大切にされるべきである。現場というのは生産現場だけではなく、本社も含めて建設、設計、品質保証、総務課、開発など、具体的な部門を指しているのではない。現場=工場や本社関係なく、実際の実務を担っている人たちの事を指している。
もっとも大切にされるべきは最前線で動いている「人」だ。
ところで、そういった最前線で仕事をしている人たちを最も大切にすべきである経営に不満を抱く人は多かろう。現場を知らず、現場の話を聴かず、押しつけがましい経営層である。思い出すにも腹立たしい。
現実と夢の対立
実際に現場で仕事をしていると、現実と夢の狭間で苦しむ。
経営からは「○○プロジェクトの構想」だとか、とてもザックリでイメージしにくい企画書が届いたりする。現場を知らぬ経営層が作った妄想である。何が言いたいのか全く分からない上に夢と言うのもおこがましい妄想ばかりで、気持ち悪い。妄想なら独りでやって頂きたい。
また「▲▲管理規定」だとか、超長大な文書が届く。分厚い。とても難しい言葉で書いてある。「これを守れ」と押しつけがましい一方的な自己満足の内容であり、現場が守れるルールかどうかという以前に、現場管理職すら読むだけも困難な内容だ。きわめて理想論で書いており、本社経営層の保身に満ち溢れている。
「あぁはいはい、そうですね。正論ですね」
とは感じるが、正論で現場が動くか。正論がいつも正しいか。「その正論、ホントに現場で出来る?」という反応がほとんどだ。
嫌われる本社経営層のアクションというのは、こういった「妄想企画書」や「守る事が出来ない規定書」を作って印刷するまでで終わっているのである。当然現場への説明はしないし、真摯な態度でもなく、言えばきわめて横柄であり「本社経営層がルールは作ったから、あとは現場のお前らがヤレ」という訳である。
例えば現場でこのルールが守れなかったとしても
「本社経営層はルールを設定した。守れないのは現場が悪い」
こういうスタンスで、何か問題があると現場を罰しに来る。彼らのスタンスはこうである。自分たちが悪くはない。現場が悪い。だから罰してやる。裁判官か、神にでもなったつもりなのだ。話し合いとかそういう事ではないのだ。最初からベースがすでに「上から目線」であるから、手に負えない。
また上手く現場が動くことが出来ていれば褒めに来るかというとそうではなく、
「出来て当然。経営の功績」
こうなる。まことに草である。
現場を知らない本社経営層への対応方法2つ
こういった現場を知らない、蔑ろにしてくる本社への効果的な対処方法は無いものか。正直そういう特効薬があれば、私が実践したいくらいである。しかしながら、なかなかそういう対策は無いのが現実である。
(1)現場と本社の架け橋になる
色々な部門に異動できる中間管理職の強みと言える対策である。現場を経験した中間管理職が本社へ異動する事で、現場と本社経営層との架け橋となる。しかしこれは理想論であり、なかなか出来ない方法だ。
現場の状況を本社経営層とコミュニケーションを取りながら良く伝え、仲間を徐々に増やしていくやり方であるが、実際はそうは上手く行かない。独りでわぁわぁと叫んでいても賛同してくれる人間もおらず、中途で力尽きる可能性もとても高い。嫌われる本社経営層ほど保守的であり、「変える」という事が出来ない。理想に燃えても現実は厳しい。そういう茨の道である。
そして「我こそが架け橋に」そういう理想に燃えた優秀な人材ほど、現実に打ちのめされ退職や転職してしまう。嫌というほどそういう人たちを見てきた。それでも頑張る、という方向けの方法である。
(2)出来ない部分は目を瞑る
これは現実的な解になる。
結局のところ、現場を蔑ろにする本社経営層の無茶な要求に対して、苦しむのは現場である。その現場をいかに現実的に守るか。これが中間管理職の役割だと私は思っている。そのためには、本社経営層の妄想はある程度は「無視」しなくてはやっていけない。
しかし「無視」した結果、何かトラブルがあると本社経営に苦しめられるのもまた現場である。実に理不尽だが、そういう風になっている。
だから、中間管理職は「無視できるライン」を正しく見定める事が大事だ。
本社経営層の無理無茶に対して、「無視」した結果を正しく見定める。結果として中間管理職が謝って済む事であれば、受け入れるしかない。本社経営層の激昂は面倒くさい。彼らは保身が大事である。だから「現場が悪い。現場の中間管理職の指導不足」こういう結論に持ってくる。原因を究明して対策を、とはいうが結論は「現場が悪い」ありきだ。彼らの出世が掛かっているのだから、そうなる。それでいじめられるのは現場の中間管理職であるが、現場の為と思えばやむを得ない。
一方で、無視した結果が「現場を更なる苦境に追い詰める」ことであれば、これは無視するべきではない。無視できない事を現場に丁寧に説明し、現場に受け入れてもらわなくてはならない。しかしここでも現場から反発はある。その反発を無理に抑え込むと、爆発してしまう。
「現場のために、どうしてもやらなくてはならない」
こういう事を丁寧に説明しなくてはならない。多くの現場の気の良い連中は、説明が腹に落ちれば「仕方ねぇな」とぶつぶつ文句を言いながらも、中間管理職の味方になってくれる。そういう関係性をつくっていく事が大事だ。
とても難しい事だが。